インディヴィジュアル・プロジェクション - とても面白かった。やはりハルヒのようなつまらない小説ばかり読んでいてはダメですね。反省しました。だからといってこのような空虚なポストモダン小説ばかり読んでいればいいというわけでもありません。どのように空虚か。この本の表紙は内容とは関係のなさそうな写真です。だから冬コミで頒布した同人誌『ポップdeリベラル Vol.1』の表紙も写真なのです。『インディヴィジュアル・プロジェクション』のような装丁を目指してどうしてああなってしまったのか。もちろん写真がなかったからです。良い写真が撮れなかったからです。しかし本当は内容が空虚なポストモダン小説になってしまうことの恐れが自分にあったのではないか。だからK宮の詩を用いて頑張って意味付けをしたのです。

銀河ガール パンダボーイ - 書名が『ジオラマボーイ パノラマガール』みたいでいいですね。「どことなくメルヘンなかんじ」の短編集らしいです。確かに、表題作の月食の祭りや、「クラブハリケーン」の幽霊はメルヘンです。残り1つの短篇はそういうところは何もなし。普通です。表題作に見られる、外部から隔絶された文化を持っているイナカというのは『ワレワレハ』の「さらさら」も一緒ですね。へんてこな共同体というテーマでかわかみじゅんこの漫画を読んでも面白いかもしれません。そこで主人公は「ここの 人たちは ぜったい 頭が ヘンだ」(表題作より)「ここは ヘンだ」(「クラブハリケーン」より)と苦悩するのです。90年代の作品に比べて、髪その他に見られるミュシャっぽい処理がヨリ目立つようになりました。カラーは全然違うけど。

ハツカネズミの時間 2巻 - 相変わらず中学生の考えたような話が続きます。でも大人ですから展開は地味です。というか地味過ぎです。会話ばかりなのは良いとしても、会話中のキャラクターのアクションが希薄すぎます。それに、話の展開もうまくありません。例えば、催眠術にかかった用務員が表れて、そこで桐子は梛が催眠術を使えることを思い出しますが、ストーリーを盛り上げるならばその前に思い出しておくべきですね。その回想を挿入できるチャンスはいくらでもあったはず。製薬会社の会長が倒れても彼はそれまでに1度も登場していないなど、基本的に伏線が少ないです。冬目景はめったに長編が完結しませんが、やはり場当たり的に描いているのでしょうか。それならばこの場当たり的展開も頷けます。学園の特殊性を表すディテールももうちょっと欲しい。