透明な存在の不透明な悪意 - 宮台真司の著作のうち、古い割にはまだ文庫になっていないものの1つ。酒鬼薔薇事件を扱っています。語り下ろしと対談から構成されており、本書と同様に事件に際し緊急出版された『終わりなき日常を生きろ』と比べると完成度は低いです。対談では、本文で語った事と同じ内容を改めて語りがちですし。ただし、事件に直接関係無いような話、例えば唐澤俊一らとの「少女幻想」に関する鼎談は面白かったです。本文では、須磨ニュータウンが異質であるという話は興味深いところでした。

短編集 - 『痛々しいラヴ』と同じ調子。絵が巧いのは素晴らしいことですね。相変わらず綺麗なものしか描かれません。それは、他の岡崎京子フォロワーである安野モヨコ南Q太の漫画とは異なりデブやブスやオタクは出てこない、といったレヴェルではなく、前髪が目にかかった綺麗な横顔ばかり、といったヨリ徹底的なものです。魚喃キリコにとってのネタ帳は日記らしいですが、そのように描かれた短編の半径の狭さもまた徹底的なものです。