悪徳の栄え 下巻

悪徳の栄え〈下〉 (河出文庫)

悪徳の栄え〈下〉 (河出文庫)

上巻で既に悪徳はインフレしてしまい、これ以上何をすればいいのやら、という感じでしたが、下巻では行為そのものの悪辣さは特に上巻のレヴェルと大して変わらないものの、ドラマ性はぐっと増しており、上巻以上に倫理の破綻した世界が強く印象付けられます。それまで主人公が大切にしていたキャラクターが、いとも簡単に主人公の手によって殺されてしまいびっくりします。親友であろうと娘であろうとお構いなしです。そんな気の変わり具合が強いドラマ性を与えています。

それにしても省略が多いです。上巻ではあまり気にならなかったのだけど、下巻では滅茶苦茶気になります。例えば、ローマ法王のところで行われた儀式がどんなものであったのか、この河出文庫版では全く分かりません。見覚えのない名前がいきなり出現することもちらほら。これはもしかすると自分の記憶力の問題かもしれないけれど、多分省略の結果だろうなあ。

最後はちょっとメタ風味に終わります。