思想地図 vol.1

思想地図〈vol.1〉特集・日本 (NHKブックス別巻)

思想地図〈vol.1〉特集・日本 (NHKブックス別巻)

生で聴いてもよく分からなかった創刊記念シンポジウムも、文章で読むとそれなりに分かります。ただ、鼎談も含めて、読んでしばらくすると内容を何も覚えていません。やっぱりある程度まとまったものでないと、政治とか国家に疎い自分が内容を把握するのは難しいところです。

伊藤剛「マンガのグローバリゼーション」と福嶋亮大「物語の見る夢」は分かりやすくて良かったです。分かりやすいのは政治の話じゃないからか。そういえば、『網状言論F改』に載っていた伊藤剛の文章が全然分からず、それ以来敬遠していたのですが、こんな感じなら自分にも読めそうなので、『テヅカ・イズ・デッド』もそのうち読んでみよう。後者に関しては、日本のケータイ小説の世界ではどういうコミュニケーションが起こっているのか気になりました。

最も政治とか国家から遠い位置にある公募論文の「キャラクターが、見ている」は、「逆遠近法」の話が出てくるまでは良かったです。「逆遠近法」の話が出てくる事自体は面白いけど、そこからインターフェースとしての美少女とかいう話になるのが、急過ぎるというか、「逆遠近法」で描かれているビザンティン絵画にはどのようなインターフェース的な機能があったのか紹介して貰いたいところです。多くの読者は美大とか行っていないと思うので、いきなり「逆遠近法」とか言われてもよくわからない。

他は、「〈生への配慮〉が枯渇した社会」とかいうのが一番つまらなくて、というかこんな単純な結論でいいのかと思ってしまって、「社会的関係と身体的コミュニケーション」は知らない世界の話なので面白かったです。