赤い砂漠/監督:ミケランジェロ・アントニオーニ/1964伊仏

赤い砂漠 デジタルリマスター版 [DVD]

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古めかしい(勿論現代の視点では)工場が、もくもくと煙を出し、人に不安を与える音を鳴らし続けています。まず工場に萌えますね。主人公の家庭も、ジャック・タチの映画のような未来感があって格好良い。ジャック・タチの映画では、こうした未来感はあまり肯定的に描かれていませんが、それは本作も同様で、公害批判が根底にあるようです。まあ言われればわかります。延々と鳴り続ける騒音なんだかよくわからない音をずっと聴いていると、主人公のように精神に異常をきたしそうですからね。だけど、そんな雑音の鳴る中、殺風景な工場地帯を映画として眺める側の自分は、割と心地良かったりします。

どこからともなく聞こえてくる歌声の挿話があります。これは美しい挿話だけれど、工場の騒音よりも、どこからともかく聞こえてくる歌声を頻繁に聞かされてしまう現代においては、工場の音と殺風景な風景を美しく感じてしまってもおかしくはないはずですし、この映画の色彩はそれに根拠を与えてくれます。