東浩紀「ポストモダンと情報社会」2008年度第6回の補足

デリダ歴史修正主義を容認したかどうかということが少しだけ話題になっていたようなので、その部分について録音を聴いてわりと正確に書き起こしてみました。自分の講義録が元で誤解を生んだのであれば申し訳ないなあと思っていたのですが、正直なところ、元の講義録と意味は大して変わらないと思います。つまりもともとの講義録はかなり言葉足らずなところがあったとはいえ、そこからデリダが「歴史修正主義を正当化ないし容認」したと読むのはかなり恣意的なんじゃないかと。

僕のその発言がどこで出てきているか、というと、
もともと僕はジャック・デリダをやっていたんですね

僕の指導教官は高橋哲哉さんという人
高橋哲哉さんはおそらく皆さんはデリダ研究者というより
靖国問題に関する専門家として知っていると思うんですが、
僕の考えでは、
やっぱりデリダというものを一回通ってしまうと、
そんなに歴史的真実とか言えなくなるはずなんですよ
素朴に考えて

それを言うっていうのは、
やっぱりある意味ではデリダをどこか裏切るということでしかないわけですよ
まあデリダが政治的な哲学者かどうかということに関しても、
僕はいろいろ意見があるんですが、
実は大塚さんとそれを喋っている時っていうのは、
高橋哲哉さんの話があって、文脈として出てきているんですね
つまりそもそも左翼とかポストモダニストが言っていたことってこういうことなんですよ、
という言い方として僕は言ってるわけですよ
ところがそこの部分はなくなってですね
南京虐殺問題だけがぼこっとネットにコピペされてですね
東はこんなにとんでもない事を言っている
こいつ何か頭おかしくなったんじゃないか、とかいう話になるわけですよ
南京虐殺とか認めてるのか
ちょ、待て、っていうやつですね

ただこれを書いて気づいたのですが、元々の講義録の「本では南京の部分だけが残された」というのは誤りで、普通に考えてここは「ネットでは」かもしれません。うpする時点でもどっちか迷ったんだよなあ。『リアルのゆくえ』を読み返して確認しよう…。