ロシア革命アニメーション 1924〜1979

渋谷のUPLINK Xにて。7月3日まで上映しているようです。

日本でロシアアニメといったら『霧につつまれたハリネズミ』や『チェブラーシカ』といったファミリー向けの作品がポピュラーですが(まあアニメ自体がそうか)、そんな無難なイメージから遠く離れた、共産主義プロパガンダアニメ16本。様々な時代の様々な監督の作品が選ばれています。ということは作られた総数はかなりの本数にのぼるのでしょうか。すごいな。

共産主義プロパガンダのためのアニメなので、資本主義とナチスを貶めるか、共産主義を称揚するかの2パターンしかありません。その枠の中で如何に作家性を出すかが見所です。

おそらくこの特集の一番のウリはウラジーミル・タラソフの「射撃場」「前進せよ、今がその時だ」で、確かにこれはすごい作品。目を離せない画面構成と奇想天外な発想。所々にディズニーキャラも出現。冷戦でもやってないとこんな演出はできないのではないでしょうか。一目でプロパガンダ映画を超えた作品だということがわかります。ロマン・ダヴィドフの「株主」という作品は強弱のついた線が特徴的なアニメーション。この絵のうまさでここまで動くのは珍しいのではないでしょうか。

一方で素直なプロパガンダが多いのも事実。『ストライキ』の100倍くらいわかりやすい。少し捻ったものにしても、物語をうまくプロパガンダに繋げて語れれば成功だと思うのですが、その物語があまりにも代替可能だったり。

アニメーションそのものは思ったよりアメリカナイズされていて、そこが最も、今日本でポピュラーなロシアアニメとは違った印象を受けるところでした。すごくディズニーっぽいものとか、共産主義国としての誇りはないのでしょうか。セルアニメはどこの国も似たようなものになってしまうのかなあ。

台詞のある作品は少なかったのですが、一番印象に残った台詞は、ソ連には人種差別など存在しないことを描いた「ツイスター氏」におけるアメリカ人娘の発言、「ホテルがないなら家を買えばいいじゃない」。