あなたは、なぜ「自分に似た人」を探すのか

鈴木謙介の『わたしたち消費』という本の続編みたいです。それは読んでいませんが。

新しく「鏡衆」と呼ばれる層が出現しており、それを踏まえてマーケティングを考え直そう、という内容の本です。「鏡衆」とは、「影響をうまく受け取る」かつ「うまくレスポンス&発信する」人と定義されています。「鏡衆」出現の背景は、「つながりの社会性」だとか「小さな共感」といったキーワードで語れるようなもので、よくある話ではあります。

ただ、何故人々がそのように共感によってコミュニケーションをしているのかというと、情報過多な状況に対し、感情や感覚の力も使って処理時間を短縮しているからだというのです。それは初めて聞く説なので新鮮でした。ところが、どうも「鏡衆」というやつは、ある商品に対し自分なりの物語を付随させて再解釈し、「情報の再消費」をしているようなのです。小さな物語が乱立しすぎると、あらゆる商品に対しても物語消費をするようになるということでしょうか。せっかく情報の処理時間を短縮しているというのに、余計な物語を消費してる場合なのか疑問ですが。

さて、「鏡衆」はこんな性質を持つ、といった説明がそれなりの分量でアンケートを駆使して書かれています。しかしそもそも「鏡衆」じたいがアンケートによって出現した層なので、「影響をうまく受け取る」かつ「うまくレスポンス&発信する」人が「彼らはヒット商品に興味を持ってランキング情報を参考にする」なんて言われても、そりゃあそうだよなあと、同語反復的な匂いがしないでもないです。もっとも、こうして名指しすることは広告代理店の重要な仕事なのでしょう。