クォンタム・ファミリーズ

クォンタム・ファミリーズ

クォンタム・ファミリーズ

とても面白い。コアアイディアから未来描写まで、これまでの評論で語られた様々なネタが詰まりすぎています。今後火星SFなどが予定されているようだけど、ここまで濃い小説が再び書かれることがあるのだろうかと余計すぎる心配をしてしまいます。

あったかもしれない世界への人格通信が行えても、結局登場人物たちは元の世界に戻れたりはしません。だからこんなアクロバティックな物語でも切なさを感じたりする。よく出来たゲーム的リアリズムな物語はみな似たような構造を持っているのかもしれません。

この小説では、そうした切なさ(?)の根拠、すなわち元の世界を保存できなかったりする根拠は、どうやら計算量に限界があるらしいから。もしかすると他のゲーム的な物語もそうなのではないでしょうか。例えば本当に無限の計算量を持ったゲームがあるとすればどうでしょう。そこではどういった感動があるのか。取り得る物語が有限だからこそ得られる感動は実はかなり大きいのではないでしょうか。

というこの文章も、頭の中も、ぜんぜんまとまっていないのだけど、プログラミング言語の「継続」を使った物語を描いてみたいとなんとなく思わされました。計算をするか、一時停止するか、決められる世界。一時停止された世界を引数に取れる世界。