ラブリー・ボーン/監督:ピーター・ジャクソン/2009ニュージーランド米

ピーター・ジャクソンの『乙女の祈り』はとても好きな鬱映画。この映画を観たことで自分は積極的にたくさんの映画を観ようと決意したのでした。ピーター・ジャクソンはその後、特に鬱ではない愉快な映画を撮り続けたわけだけど、久々に鬱の予感をさせる新作ということで、大変な期待を持って観たのでした。

その結果…期待の100分の1くらい満足かなあ。

確かに予告編から嫌な予感はしたのでした。ヒューマニズムとスピリチュアル溢れるそれを観て、『乙女の祈り』を期待せずにはいられなかった自分は(何しろ『ラブリー・ボーン』の原作者の最新作は母親殺しを扱っているという!)、「いやいやいやもっと挑戦的な話に違いない」と思わざるを得ませんでした。「こんなはずはない!」と思い込まずにはいられませんでした。

そして実際、その思い込みに違わず、主人公が殺されるまでは期待通りの素晴らしさ。しかしここがピーク。その後の展開で予告編を裏切るようなことはありませんでした。そのうえヒューマニズムとスピリチュアルにしても中途半端としか思えません。こういうのは他の映画監督に任せておくべきですね。

そもそも、主人公が現実世界をただ眺めているだけという状況で、話を面白くするのはとても難しいと思います。自分が期待したような挑戦的な話にするか、あるいは『漂流教室』みたいにちょっとした影響を与えられるようにするかでしょう。この映画はそのどちらとも異なっており、丁寧なカットつなぎでひたすらがんばる映画になっていました。