東浩紀「ポストモダンと情報社会」1/22

今日の東浩紀の授業

20分ほど遅刻

こんにちは
明後日位に引っ越す
これは大変なことで授業とかやってる場合じゃない
いろんなことがめちゃめちゃ
無理ですよね

レポートのプリントは後で配る
それはちゃんとやった
パワポはファイルを忘れたので今日はなし

ちゃんと授業はやります

こういう職業なんで本がすごく多い
本棚に入っていない本が多い
変な本が多い
引越し業者に見られたらまずい
エロ漫画家の友達とか多い
箱詰め大変

本の計画もいっぱい
ゲラとか殺人的

髪も切りに行かなければいけない
去年の年末とかは暇だったのにどうしてこんなことに…

来週には復活している

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北田さんとの共著『東京から考える』がついに出ました 暇があったら買ってみてください どんな話が載っているかというと… 北京の古い町並みがどんどん縮小している しかし地下に古い北京の町並みのショッピング街ができている 日本では池袋のナンジャタウン 新横浜のラーメン博物館 空港に江戸タウンみたいなものを作る 昭和30年代の日本を追体験するテーマパークが東京にはいっぱいある 一方ではポストモダンシティ化 世界中でそうなってくるでしょう 都市の世界はテーマパークとして残っている 外見では世界中どこもかわらない エスニックタウンのヴァーチャル化 エスニックタウンの姿が見えなくなっている マイノリティグループがヴァーチャルにのみ作られている 思想のレヴェルと 身体のレヴェルを 分けたまま共存させていく 思想のレヴェルでは多様性、自由を追求 一方、身体のレヴェルでは安全を追求 正しい街のデザインというのは「身体」の方で決められている 一方、 ディズニーランドなどでは 過去の記憶からいくつかの要素を取り出して 古い町が残っているかのように作られる 西荻窪から引っ越す 西荻窪は書店員、編集者に人気がある 吉祥寺とか阿佐ヶ谷も人気があるけれどそれは大きい街だからわかる 西荻窪は小さいのに人気がある 変な飲み屋とかアンティークショップがある 西荻窪という街自体がテーマパーク化している 街の生き残り方というのもいろいろあるが サブカルテーマパークという選択もある
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Hacker 悪いことするやつは Cracker と呼べという説もある しかしこの授業では Hacker で統一 80 年代から広まった言葉 スティーブン・レビー『ハッカーズ』工学社 売る気ない装丁だけれど良い本 レビーはアメリカのジャーナリスト 暗号化の本なども出している マッキントッシュの発展のような本も書いている コンピュータと社会のかかわりの歴史のようなものに関心があれば読んでおくべき 1984 年に出た 1983 とか 84 とかはコンピュータ関係では良い感じの年 リドリー・スコットが作ったアップルの CM が放映 輝かしい未来が共有された 『ウォーゲーム』 中学生コンピュータオタクの 2 人 公衆電話の丸いところにかぶせてモデム代わりに使う装置を用いて 国防総省かなんかに入れてしまった コマンドだけで国防総省のコンピュータ相手にゲームをやりだす ゲームだと思っていたら本当の戦術コンピュータだった 核戦争の引き金になったりしてドタバタする さえない 2 人組みが世界を動かしている ハッカーの原型的なイメージ まさにこのようなやり方で ATT に侵入する事件もあった 元々はメインフレームコンピュータを使って MIT とかの大学生は勉強していた 巧い具合にプログラミングしていた人たちがだんだんハッカーになっていった しかしそのうちガレージでコンピュータをいじっている、 アマチュアのコンピュータ愛好家達が 70 年代に出来てくる 70 年代には RPG ができてきた ピンポンのようなコンピュータゲームもできた このようなゲームを中心としたサブカルチャー的な流れも ハッカー文化をつくっていく 白田秀彰さんの本を読むと良い 法政大学の法学者 もともとコンピュータが好き ハッカー文化は内実的にはどういうものかというと 徹底した自由主義 自由というものがすごく強い メカニズムを理解してチューニングして使いこなす このような技術者の喜びと自由というものは非常に密接 今はネットなどではゲーム機の改造が多い PSP で何かが動いてみましたとか ハッカー文化には ヒッピー文化のような 反体制というものも密接に結びついている 梅田望夫さん『ウェブ進化論』 世界中に安価にものを発信できることがいかに素晴らしいか ハッカー的価値観 反中央集権的な個人主義的な自由 この観点からみるとレビーの興味は一貫している 1. ハッカーズ 2. 人工生命 〜 複雑系創発」 個々のエージェントがばらばらに動いていても集団としては 1 つの秩序ができている 3. 暗号化 ハッカー達の言葉のなかに「個人の自由は数学的に守る」という表現がある これは暗号のことを言っている 個人のプライバシーとか自由を暗号化 数学的な原理によって守られている クリプトアナーキスト(暗号無政府主義)という一群の人たちがいる 暗号の力によって徹底する個人主義 PGP という暗号がある Pretty Good Privacy フィル・ジマーマンが開発 フリーソフトで簡単にインストールできて誰でも暗号が使える これは国家の危機をもたらすかもしれないと連邦政府は考え裁判が起きた クリントンはインターネットの規制に関しては結構厳しかった キーエスクローシステム 鍵共託? 強力な暗号を使う人はその鍵を政府にも預けるというとんでもないもの 暗号を個人の手に渡すのか渡さないのか 以上のようなハッカー文化というものは社会とぶつかっていくようになる
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ブルース・スターリングハッカーを追え!』アスキー出版 "The Hacker Crackdown" 原著は PDF で全部読めるので検索してみるといい # 東工大生は英語ができないときくけど… ハッカーがクラックされたというタイトル ハッカーとクラッカーというものを混同した世の中に皮肉を込めている ブルース・スターリングというのは ウィリアム・ギブスンの横でサーバーパンクのエンジンとなった評論であり作家 # 日本ではなんでかこういう人がいない # ある種の大衆知識人なのだが日本では大衆知識人というと人文的文学的になっている # アメリカはジャーナリズムで活躍できるインテリジェンスが非常に強い # 僕もそういう人になりたかった # 日本にいる限り駄目なんだなあ # オタク研究でもやるかみたいな 80 年代後半に ATT に侵入するような事件がおきたため 1990/5/9 にアメリカでハッカーに対する一斉取締りが行われた ネット上のマニュアルを落として面白がっていた 仲間うちの BBS かなんかでアップしていた そして捕まった ATT は「このマニュアルを作るのにいくらかかったんだ」と主張 人件費などを計算して損害賠償を請求 しかしハッカーはマニュアルを盗んだことになったのか ATT は損害を受けたのだろうか そんな中、 EFF 電子フロンティア財団という組織が出来る NPO をつくってハッカーは自分達で理論武装していこう 連邦政府ハッカーの戦いが起きたときには結構活躍していた こういった話が載っている 当時の BBS の雰囲気もわかる
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ジョン・ベリー・バーロウという人がいた かつてグレイドフルデッド(?)というバンドで作詞をしていた この人が EFF の理事をやっていた 「サイバースペース独立宣言」というテキストを配布 95年くらい アメリカ独立宣言になぞらえている これもハッカー史の中で重要 ハッカーの反中央集権的反国家反体制な主張は すごくアメリカ的なものだということがわかる EFF はフロンティア 反中央集権的反国家反体制というのは反アメリカというわけではない 今のアメリカではできないがサイバースペースという新しいフロンティアでは可能 ハッカー文化におけるアメリカ中心主義は 今の Google などにも関係している
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レッシグの『CODE』の面白さはこういった流れを知っていないとわからない レッシグが単独出てきたわけではなく レッシグの背後のハッカー文化の流れなども見ていかなければいけない # 山形浩生の翻訳にけちつけるわけではないが # タイトル自体が英語っていうのはどうなんだろう # ちゃんと訳していただきたい # 映画のタイトルなんかも # 和製英語はもっと悪い # 原題と違うのになんでカタカナなんだよみたいな レッシグはすごく若い 東とあまり変わらない レッシグは法学者 Creative Commons Blog もやっている Establish な法学者でもあるので アメリカの憲法理念とハッカー主義とどう折り合いをつけるのか この人の立ち位置はすごく重要 DRM デジタル著作権管理 1 曲聴くたびに課金され、こちらのユーザーデータが送られるような Creative Commonsレッシグがはじめた DRM 煩雑な著作権管理をなんとかしようと Creative Commons で考えている デジタル技術を使って、クリエイターが相互引用をしやすくする CODE の意味 1 つは法的(憲法) 1 つは技術的 気の利いているタイトル 『CODE』は東工大生なんだしこれくらいは読んでおいて欲しいという必読書 どんなことが書いてあるか 欲望に 4 つの矢印が向かっている 市場 ↓ アーキテクチャ → ○ ← 法 ↑ 社会の規範 例えば DVD のリッピング 法 規制 市場 安くする アーキテクチャ 技術的に吸い出せないようにする アーキテクチャによる管理は重要だが暴走は良くない 技術による管理というのは技術の論理だけで突き進むこともできるし それを破ることもできる 法によってそれを規制する 技術的なコードと法的なコードのバランスが大事 これまでの話の 「環境管理」はアーキテクチャと市場 「監視社会」は法と社会の規範
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来週は『CODE』のもやもやとした話とか 引越しが終わって復活した僕とかを 見せたいと思います