青山一丁目、乃木坂
REMIX/ローレンス・レッシグ
- 作者: ローレンス・レッシグ,山形浩生
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2010/02/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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レッシグの著作権ものの最終作ということだけれど、個人的にはこれまでの3冊からあまり進捗がなくて残念だった。もちろん十分に面白く読める本なのだけれど。
訳者あとがきで山形浩生も不満を呈している。犯罪者を減らすために法律を緩くしよう、という点について。これは確かに不思議な話で、犯罪者を減らすことが本の「結論」とするほど大きなこと論点なのであれば、『CODE』で描いた悪い未来のようにがアーキテクチャ的に規制してしまったら方が犯罪者の若者は減るから、世の中はマシになるのではないか。そもそもハイブリッド経済がそんなに良いものであれば、法律が変わらなくても、がちがちなアーキテクチャ上で経済的な選択として自由を可能にする流れが一般的になるはず。『コモンズ』で描かれたようなイノベーションの阻害も、今のところそこまで深刻な事態にはなっていないように思うし。
レッシグの言うように、アマチュア創作だけフリーにする方向で著作権法を緩くするとする、しかし、商業利用の場合はフリーにしない、というのを厳密に行うのは困難で、例えばYouTubeはリミックス作品によって広告収入を得ていて、それが元の権利者に還元されるためには、結局がちがちなトレーサビリティの付随したアーキテクチャが必要になる。それは結局最強のコントロールも提供することになる。そのYouTubeも、日本の同人誌も、(無償公開されることもあれば有償公開されると思われる)ツイートをサンプリングした現代美術も同様に、アマチュア創作とそうでないものの区別を付けること自体かなり難しい。
フリーかそうでないか、というだけであれば話は区別は容易だけれど、アマチュア創作から生成された広告コンテンツは商用なのは自明、だけど広告コンテンツとして作られたアマチュア創作は? 収益を得ているかどうか、という問題以上に収益が発生するのは誰の意思によるものかという問題に直面する。というわけで、プラットフォームを提供することで広告収入etcを得ているプレイヤー、ならびに広告コンテンツとして作られたアマチュア創作(場合によってはその逆)をうまく整理できないと法律を変えるアプローチは難しいように思う。
ところで、レッシグは「デジタル共有小作はこの世界では長生きしない」と断言している。これは二次創作物の権利を一次創作者が保有するということで、例えばかつての私のプロダクト「ノベラル」はそういう売り方をしていた(その方がセールストークが容易)・自分達のプロダクトはレッシグに全否定されるものだったのだ!w 実際、多くのユーザーは規約をろくに読まないし、運営側も読んでいないかもしれないから、問題が出てきた時に違いが現れるし、そもそも実際にノベラルを利用してくださったメーカーさんは、二次創作物の権利をユーザーにあるものとして運用することになったから、問題ないわけだけど…しかし! 実はデジタル共有小作のロジックは自分が就活の面接で使った部分だったりするから(安全に二次創作させることが重要とか何とか喋った。もちろん広告代理店にはその方が受けがいいw)、今の自分をやや否定される感じではある。まあ、実際そういう仕事をしてるわけじゃないけど。
後はメモ。
・権利を減らして責任を減らすというのは重要なことに思える。ブランドそのものの考え方を変えざるを得ないけれど。ただ日本の場合、元権利者よりもプラットフォーマーの方が十分に責任を要求されている気がする。
・フリーなコンテンツがGPLのように伝搬するだけだったら話は簡単。
・商業経済、共有経済の区別は、まあ想像できる範囲だけど、共有経済を自己中心と汝中心に区別するというのは考えてなかったな。
・商業経済、共有経済が如何に相容れないかは日本語であれば嫌儲の一言で説明が終わる。だからといって日本でハイブリッド経済が栄えていないわけではないのがまだまだ解明すべき余地のある部分。
電通とリクルート/山本直人
- 作者: 山本直人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/12
- メディア: 単行本
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タイトルの2社についての歴史書だと思ったらプチ思想書でした。タイトルは半分くらい釣り。まあタイトルなんて釣りでこそ新書か。さおだけ屋的な。
後半(思想部分)がちょっと冗長でした。更にねちねちと書けば自由論になります。個人的には歴史部分の方が楽しかったです。まあ仕事上興味を持たざるを得ない部分ではあるけれど。
ダンス・ダンス・ダンス/村上春樹
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/10/15
- メディア: 文庫
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初期3部作の続き。やはり村上春樹の中ではこのシリーズが好きですね。『羊をめぐる冒険』よりもキャラクターが目立っていて愉快に読めます。当然のように人がばったばった死んでいくけれど、愉快に読めます。…いいのか?
「踊る」というと資本主義社会で踊るイメージが強いのだけれど、どうもこの作品ではそうではないようで、センス闘争をとびきり上手にやるということでしょうか。それはメタ的に読みすぎか。資本主義社会で踊ることができてもセンス闘争に敗北すると突然死は訪れる!
クール井上/いましろたかし
- 作者: いましろたかし
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2002/12
- メディア: コミック
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いましろたかしは雑誌の中でたまに読むと面白いのだけど、真面目に読むとそんなに面白くないということがわかりました。ずっとテンションが低いままだからでしょうか。雑誌内のように落差を味わえない。そんな単行本の中では、パチゴロの話が面白かった。短いギャグ漫画も悪くないけど、もっと上手に描く人はいそう。