下流社会

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

面白い本です。統計を眺めて楽しめます。Amazonのレヴューを読むと、統計が杜撰、サンプル数少なすぎなどと批判されていますが、その杜撰さがバカにもちゃんとわかるのだから親切な本だと思います。統計なんて取らずに、「私の知り合いは〜」「私が見てきた学生は〜」などと主観的な例を挙げているだけの本なんて無数にあるというのに。この本に怒っている人たちは、そういった本に対してもきちんと怒っていただきたいものです。

東浩紀は講演で、三浦展の本の最大の弱点は写真にあると述べていました。例えば「希望を失った若者が街中に倒れ込んでいる」という言葉とともに街で眠り込んでいる若者の写真が載っています。でも起こしたらIT社長かもしれない、と東浩紀は言います。確かにそんなこともあるでしょうが、それでもやはりこれらの写真は本の楽しさを増しています。1冊の本に込められた物語を明瞭にしています。このようにリリカルな写真が添えられた評論といえば、宮台真司の『終わりなき日常を生きろ』が想起されますが、これも写真が良い効果を出しているので、似たようなメソッドで作られている評論をもっと読んでみたいものです。そもそも自分はこの本を、東浩紀のいう弱点である写真が気になって読んだのです。