プログラマと個室について雑多な話

経営者はプログラマに個室を与えるべきだとJoelは書いており、それは結構正しい気がするので、以前、正しい事の行われる印象の薄かったバイト先で、社長に「卒業後は○。○○○○(←社名)だよね? (君がうちで社員として働く頃には)個室が用意できるようになってるよ!」と言われた時は衝撃でした。勿論、正しい事が行われる事と正しい事を志向する事は別なので、単に、正しい事を志向しているけれど、実際には社員はパーティションすらないタコ部屋に詰め込まれて狭苦しい思いをしている、ただそれだけの事がわかっただけかもしれません。

さておき、この時自分は「個室なんて要りません。周りの会話が聞こえた方が楽しいし…」と答えました。自分は個室で幸せになれる気がしなかったのです。仕事中にmixiは見てもエロ動画なんて見ないしなあ(そういう問題じゃない)。とにかく、Joelの主張は正しいかもしれないけれど、自分にとって実感の湧かないものでした。ただ、この発言は、仕事が捗る事よりも自分の幸せを優先した結果であり、つまり経営的な判断ではないのです。自分は、この会社でどうでもいいコーディングをしているよりは、周りの人間のどうでもいい会話に耳を澄まして時には会話に紛れたりする方が面白い。安い時給で働かされていればこれは当然の事ですね。また、この会社では、社員になって、仕事を頑張ったところで自分が幸せになることが想像しにくい。だから、仕事が捗ることは本当にどうでも良い事なのです。

素晴らしい想像力を持っていれば、頑張った結果得られる素晴らしい未来が想像できるかもしれません。しかし自分には、とても困難なことでした。それが出来る可能性があっても、そんな事に頭を使う暇があったらプログラミングをしている方が良い、と思ってしまう程度には自分は引き籠もりプログラマなのでした。この会社にはもう1ヶ月近く行っていない。

このように、やる気のないプログラマが個室を望まない、というケースが往々にしてあると思います。プログラマが望まないのに個室にしても仕事をサボるだけでしょうから実に無意味です。一方、やる気のないプログラマが個室を望んでも喜んでサボるだけでしょうから完全に無意味です。まあ仕事をする気になれないダメな会社の例を挙げても仕方ないかもしれません。おそらくはダメではない会社について考えてみます。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0605/02/news039.html

上のページからも分かるように、日本において割と注目されているはてな社内の労働スタイルは、個室とは完全に異なり大変開放的です。しかしこれが上手く行っているのだとすれば、そもそもはてなで行われるコーディングは個室でなければならないほどに難度の高い、集中力を要するものではないからかもしれません。自分でも、ヌルい仕事であれば、家で引き籠もってプログラミングしても、部室や飲み屋でたまに会話とかしながらだらだらプログラミングしてもあまり変わらないように思えます。そして、世の中のプログラマの仕事の多くはそういうものかもしれないので、大抵の場合やはり個室は必要ないのではないでしょうか。

個室でやるべき事はきっと、OSのカーネルコンパイラのプログラミングで、これらは明らかに引き籠もりハッカーの仕事ですね。引き籠もりハッカーが仕事をするならば当然、個室は必要です。