秘密結社の手帖

秘密結社の手帖 (文春文庫)

秘密結社の手帖 (文春文庫)

SOS団によって、現代でも秘密結社が人口に膾炙しているようですが、この本ではKKK団などの歴史上の様々な秘密結社について書かれています。自分達もSOS団を作ろう!などと考えている人間は参考になるのではないでしょうか。

人の名前がたくさん出てきて覚えられません。勿論秘密結社もたくさん出てきて当然覚えられません。興味深い話はあっても数ページで終わってしまいます。詳しい話が読みたければ他の本を読めば良いのでそれはべつに良いです。不満は、せっかく色々な時代、色々な地域の秘密結社を取り上げており、それにも関わらずその内容にかなり共通点がみられるのだから、本全体をまとめる軸、秘密結社のまとめ的な文章がもっと欲しかったです。「あとがき(初版)」の「正統と異端」の話が面白かっただけに。

Y田タヌキが理科大呉智英の授業を受けようというので行く。神楽坂のキャンパスかと思ったら九段下。田園都市線に乗っていくなら神楽坂よりずっと行きやすい。授業の後は渋谷で飯食って大学寄って成績表ゲットして帰る。

以下、成績。落とした科目は載らないのかなあ…。取れているはずの科目は全部取れていて、一安心。

ソフトウェア論理学:75
案外低め。自分が頭悪い答案およびレポートを出しただけかも。
ソフトウェア工学特論:92
馬鹿馬鹿しいプレゼンをするために頑張りました。
システム開発プロジェクト総合実験基礎:88
グループワーク。これよりも低い点の人がいたら本当に申し訳ないです。
ソフトウェア開発演習:84
2つ目の課題は未完成のままレポート提出。授業は一度も出席せず。
基盤ソフトウェア:90
ぬるくて楽しい授業でした。
価値構造:85
グループワーク。グループの仲間の貢献が大きい。
情報マネジメント法学:90
人数が少なすぎて、1人当たりの和訳の量が多く、今学期で最もコストの大きな授業でした。
先端スキル開発特別講義I:優
東大と合同の授業ゆえに点数表示はされないのかな。

呉智英「文化論」9/22

理科大の授業に潜る。今日は初回なのでとりあえず行ってみたけれど、さすがに毎週土曜日理科大まで出向くのはコストが大きいので、今後潜るかはわかりません。

試験はあるけれど
プリント、ノートなど
全部持ち込み可
レポートと同じようなもの

レポートにすると友達に書いてもらうやつがいるから試験にする

試験の内容は簡単

これまで難しいと面白いという意見があった
難しいという人は既成観念に囚われている人
既成観念に囚われなければ全然難しくない

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文化論 文化というのは大変意味が広い この授業では重点的にマンガの話をする はだしのゲンを中心にやる 小中学校の課題図書で読んでいるから簡単だと思って授業に出ないと、 試験は全然出来ません 平和への決意を…などと書くとそんなものは小学生の作文
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今日は文化についてやる Culture この言葉は非常に多義的に使われる 秋は連休が多くて、文化の日がある この日に所謂文化人が講演したりテレヴィでレクチャーしたりする 11日3日はなぜ文化の日なのか この日に文化が出来たわけではないのに何故なのか 元々は明治節 本来は明治天皇の誕生日 今の天皇今上天皇 11月23日を今上天皇誕生日と言わない かつては単なる天長節 明治天皇が無くなったあと明治記念日になって文化の日になった べつに明治天皇が文化を作ったわけではない 日本が敗戦したときに 米軍の占領によって それまでの日本の伝統的なものを悪いものだとしてやめようということで チャンバラが禁止されたりした その時に天皇を崇めるような明治節なんてなくしてしまおうとしたが 便宜的に文化の日にした 4月29日はこの間までみどりの日といったが 元々みどりとは何の関係もなかった 昭和天皇は生物学者だったが水中生物 文化の日もはっきり明治の日とすべき 右翼の人たちもそう言っている 私がそう言うと皇室を敬う気持ちが高いと思われるが、 むしろ皇室は国民生活に入ってこない方がいいと思っている では何故変えよと言っているのかというと 明治記念日に変えた上で天皇制を廃止しなければならない 今は天皇は文化だと言っているようなもの 天皇誕生日文化の日だと認めていることは天皇制を認めているようなもの 論理的一貫性が無い 諸君らの常識を覆していくのがこの講義
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Cultureは元々農業 agriculture agri = field Cultureだけだと耕作するという意味 Cultureは農業だと多くの人は知っている 同時に文化である それゆえにしばしば誤解がある 英語の経済誌を読んだときに出てくる monoculture これは単一文化ではなく単作農業 主に後進国、旧植民地だった国で行われている 植民地にされている方は良いことがない 迷惑な話 農業に被害が大きい 気候や物価変動に弱い なんでCultureは農業なのか 農業も文化も人間しかやらない アリの中には農業をするものもいると言う人もいるが 厳密にはあれは農業とは言わない アリはそれしか出来ないから 本能にプログラムされたことしか出来ない 人間の場合は様々なことが出来る 自然を加工することが出来る 文化も自然を加工する もう一つの考え方 農業は作物を実らせる 文化も人の心を実り豊かにする 心を耕す 文化には2つの考え方 1つはドイツ系 - 心を実り豊かにする だからCultureは文化  心を豊かにするものが文化  価値判断がある もう1つはアメリカ系 - 文化人類学(人類学の一種)  人類学には主に文化人類学と形質人類学がある  肌の色や目の色を考えるのが形質人類学  文化と言う側面から人間を考えるのが文化人類学  人間の生活形態の総称総体  価値判断がない 文化の日に講演する 所謂文化人は有名人 有名じゃない文化人はあまりいない 小説家とか画家とか しかし軍人は講演をしない 経済人も講演しない 政治家もあまり講演しない 文化の日に出てくる文化人は ドイツ人文系の文化の考え方に関係している アメリカ系の考え方では価値判断がないがないから 政治も戦争も文化 文化人類学の中に政治人類学、経済人類学が成り立っている 誰が出てきて講演しても良い 客観主義 どちらが良い悪いではなく2つの考え方があるということ この2つがあるということを覚えておいて欲しい 将来ものを考えるときに基本的に覚えていないといけない
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マンガを中心に講義を進めていくけれど 昔から「マンガは文化か」という問いがある 今は昔よりも遥かに市民権を得ている 外務大臣麻生太郎 マンガが好きで秋葉原で若者にアピールしている マンガは文化という問いは勿論ドイツ人文系の考え方 文化人類学の考え方ではもちろんマンガは文化 その辺の議論が如何に大事であるかということについて ちょっと話をする
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朝日新聞の社説 「貧しい漫画が多すぎる」 1990.9.4 東京都の文化生活局が市販されている週刊誌、月刊誌の セックス描写を調べたことについての話 漫画の50%に性的描写 みんなの税金でこんなことを調べている 原則的には現在において良識的なことが書かれている  外国からやってきた人は漫画の露骨な性的描写に驚く  性の商品化  男性の好色に都合よく描かれている この社説は自分たちの良識に合致しているということを考えて欲しい
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『好色一代男』 子供の頃から大変に女に興味があり、 最後まで好色の限りを尽くした 財産を処分して船を作って日本を出て行く 伝説の女護ヶ島に行く 船の名前が好色丸(よしいろまる) 最後の最後まで人を食った小説 生涯に何千人の女ともやるが何百人の男ともやっている 女性蔑視という点からするとこれは救いどころ 第2話 主人公世ノ介が現在の小学校2年くらいの年齢 5月5日端午の節句、現在では6月のはじめ 現在なら OLが仕事から帰ってきてワンルームマンションで カーテンを閉めるも間に合わないような感じで 服をてきとうに脱いでシャワーを浴びるみたいな状況 「行水をまさか見ている人はいないだろう」 世ノ介はあずまやの棟から望遠鏡で見る 「夜お前の部屋に入れろ、入れなければお前のOL仲間にこのことを言いふらす」 その後結局世ノ介はこの女の部屋に行く これは強姦 糠袋も出てくるがこれは自慰の具 好色一代男は女の人格を全く考えていない 唯一救いがあるとすれば男の人格も考えていない 朝日新聞は好色一代男は批判せず、漫画は批判する 答えは一つ 漫画はみんなが読んでいるから 好色一代男は天下の理科大の学生でも読めない つまり知的でないと読めない 知的水準が高ければ好色に浸ってもいいのか 学歴の低い人は駄目だというのはおかしい 日本は検定教科書 どこが教科書を作ろうと構わない 間違いがあったりするといけないので検定をする 検定には是非の議論がある しかし日本は教科書でなければ法律に引っかからない限りどんな本を出しても良い かつて家永三郎の検定不合格の教科書が出た これは革新の立場から書かれた本 「町人文芸」の項 時代の状況が変わってきたので 民衆でも文芸を楽しめるようになった 井原西鶴は新しい文芸の旗頭 民衆の心を巧みに反映し、それまでの支配的な文学とは違い力強い民衆の文学 つまり『好色一代男』をほめている 革新派の人権を護る立場の人がこんなことを書いている 家永はリベラルな人 なんで井原西鶴を褒めているのか 別の論理があるのか 漫画と古典との間に明らかに亀裂がある
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日本ではポルノっぽい漫画が氾濫している 性表現が解禁されているドイツやフランスでもこんなことはない、 と朝日新聞は書いているが… フランスにはマンガ専門店がある 雨よけのテントにこのようなことが書いてある 「BANDES DESSINEES」 線画を束ねる 一コマではなく繋がっている 略してBD 一般書店でもマンガ専門店でもマンガは売られている b.d. erotiquesコーナーがある ずばりエロマンガ 当然ながら未成年は入ってはいけない しかしすぐ横に『タンタン』が並べられている 少年のかわいい冒険譚 これでは子供は見てしまう 少なくとも表紙は見てしまう 中まで見てしまう子供もいるかもしれない こういう事実を無視した 朝日新聞の外国人が顔をしかめるという文章はおかしい もっとも、然るべきゾーニングはしなければいけない

呉智英「文章表現法」9/22

後ろの方から、「話の面白い先生だから3年連続で受けてる」という女の人の声が聞こえてきました。

今日が最初なので全般的な説明をする
講義の進め方について
最初の3回ほどは文章表現の要点のようなことを講義する
その後は、講義の数が毎年平均12回くらいあるが、
残りは諸君らに実践をさせる 毎回宿題を出す
文章表現論ではなく文章表現法
実際にやらないと意味がない

理科系の大学なので文章が下手な子が多いのでこういう講義をやってくれと
理科大で教えている友人に頼まれた
大学で教えるのは本業ではない
赤字だけれど来ている
本業はいろいろあるが
カルチャーセンターでも文章表現を教えている
そこでは中級〜上級を教えている
ここでは初級を教える

課題は
A4の原稿用紙 縦書き手書き

ワープロも便利だが
実際に書かないと字が書けなくなる
肉筆直筆を書かないといけない時が人生の中にはある
就職の時の履歴書
これは手書きが一般的

私は字が下手ですが
諸君らはきちんと書いてください

縦書きが大事
今後また細かく説明するが400字詰めの原稿用紙に書いてもらう

試験はなし
課題を出せば6点(提出点5点+最低点1点)
10回で60点 単位は来る
点数は極めて諸君らにとって有利になっている
文章で人は死なないから

諸君らの課題をプリントして配る
名前付き
当人の励みになるでしょう
そうしないと巧くならない

勤めている人は遅れてくることもあるだろうけど
課題を出す事が大事

「文化論」よりも「文章表現法」の講義の方が人数が多い
それは文化論は役に立たないが
文章表現は役に立ちそう
しかし文章表現は添削をしないといけないから人数が多すぎると面倒
最初に小試験をやって巧いやつをとっても
下手なやつを巧くするのが目的だから意味がない
選別は最初の3回の出席によって決定する
出席カード3回分によって履修登録を受け付ける
社会人で出張・残業などで来られない人も居るかもしれないが
証明書(形式は問わない)をくれればよい
病気やゼミ合宿も、医師や指導教官による証明書をくれればよい
これでかなり数が絞られる

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この「文章表現法」でやるのは文章の書き方 自分は文章巧くないから文章巧くなりたいと思って 文章巧くなるための本を読んだりするかもしれないが ああいうものは忘れてください ここでやるのは名文ではなく明解な文章 明解でなくても名文は存在する なんだかわけがわからないけど感動してしまう 説明できないくらいすごい そんな馬鹿な話が…でも在る そういうのは初級の諸君らがやっても意味が無い 言語を文字化したもの文章 日本人は中国から文字を借りてそれを1500年使っている 基本は言語 文字化されると整理される 言語はギリシャ語でlogos logosには論理という意味もある 「はじめに言葉ありき」 logosありき 論理、理性、理性の光があった 同じ意味 学問という意味にもなる サイコロジー、アルケオロジー 言葉は論理 これはすごく大事
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明解な文章は練習量に比例して伸びる もちろん才能もある でも努力すれば出来る 名文は違う 出来ない人は出来ない この講義を受けると名文を書けなくなるということもない 明解な名文が書けるようになるというだけ 自分が名文家だと思っている人も何の心配もいらない 言語は論理だということを肝に銘じてください 特に理科系の諸君らは 名文も論理 小学生の論理ではなく高等数学の論理だというだけ 文章の本質は論理 そう考えると理科系の方が有利だと思われるがそもそも 理科系も文科系もない 理科系の人は文章を書く時間が短い、練習量の違いだけ ドストエフスキーも工兵学校を出ている 湯川秀樹も親戚は文科系の一流学者が多い 一族の中に理科系の天才も文科系の天才も出ている しかし違いはあるのではないかと言うかも知れない 普通程度に頭の良い、理科大に行けるような人にとって 慶應の法学部に行ってる奴と違いがあると思われるかもしれない 勉強の違いだけがある 理科系は真面目 文科系はいい加減 これだけ ぐれて暴走族になるかもしれない ぐれた期間勉強しなくて島崎藤村読んでないからといって その後、芥川を読めないということはない 室町時代やってなくても江戸時代がわからないということはない 三角形の合同条件がわからなければ幾何はわからない 理科系は積み重ねが大事 積み重ねのある段階が飛んじゃうとその後何も分からなくなる これが理科系と文科系の違い 本当にすごい人は違いがあるかもしれないけど 本当にすごいドストエフスキーは理科系だった 諸君らは文章を書く時間がなかっただけ だからやればできる 滞空時間にパイロットの腕は比例する 喋ってるときはいい加減 冗長性がある 文字化して整理すれば文章になる 言語能力は人間の基本 標準装備 その中に優劣の差があるが、理科大に入れるくらいの知能があれば大丈夫 species 種 種に標準装備されている能力とされていない能力があるが 文章能力はされている能力 20歳男子100mを10秒で走れば無茶苦茶早い 私の高校時代の体力測定 スポーツあまりやらないから遅い方だったから13秒後半、 平均は13秒前後 9.77と13.8の誤差率は3割程度 ものすごく遅い子でもその程度の差しかない 半年間特訓をすれば私でも12.5くらいで走れるようになったと思う 標準値からそれくらいしか違わない 人間という種はそれくらいで走らないとまずいからそうなっている 42,195km走るのは標準装備ではなくオプションだから 走れない人も居る 文章は練習量 つまらない自尊心があって恥ずかしいと思っているとだめ
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文章表現の本は役に立たない 5W1Hがどうのなんて考えているプロの物書きはいない 物書きとして大成出来なかった奴が文章表現の本を書くから信用しなくていい 何の役にも立たない 文章で大事なのはわかればいい 簡単でものすごく難しい わかればいいということは、わからなければだめ わかる、わからないはどういうことか 相手(1人〜)を想定する 夫婦の会話「かあさん、あれ」 これだけでわかる わかればいい 5W1Hもへったくれもない 「お父さんは胃が悪いので胃薬をこれから飲む」なんて言う必要は無い しかしわからなければだめ 文章は相手の目で書く もう一回読者の目で読み直す 諸君らがラブレターを書くときのことを考える 相手が100%正しく受け取るかどうか読み直す 中級になると引っ掛けがでてくるけどこれは別の話 標準的な文章 - 新聞記事、雑誌記事 多くの資格試験は高校卒業程度 日本の高校卒業のレヴェルはとても高い 日本の一番知的水準が高いのは高校3年生と言われている それが本当に出来ているかはともかく、出来ていると想定して書く 高校卒業程度を想定して書く
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もう一つ、 辞書を引くことも大事 辞書を侮ってはいけない 電子辞書でもいいけど紙の辞書の重要性を認識してください 偶然知らない言葉を見ると言葉についての知識が増える 電子辞書は広がりがない 言葉の定義はロゴスの基本 重い辞書は引かない 広辞苑大辞林 だから小さい辞書が便利 でも辞書はいくつかあると便利 意味の違いがある ほとんど内容の同じ辞書がある 個性がはっきりしている辞書を2つ買ってもらいたい 辞書はとにかく使って欲しい 辞書は面白くないと思われているかもしれないが そんなことはない 小型の辞書で良いのが2つある 『新明解国語辞典三省堂岩波国語辞典岩波書店 個性の間が離れていて良い 「恋愛」 男女間の、恋いしたう愛情(岩波) 一組の男女が相互に相手にひかれ、ほかの異性をさしおいて最高の存在としてとらえ、 毎日会わないではいられなくなること(明解) 明解は何でこうまで言いたくなるのか、奇妙な編者の情熱がある どっちがいいとは言わない 「清廉」 心が清らかで私欲がないこと(岩波) 心が清らかで私欲がないこと 〔役人などが珍しく賄賂などによって動かされない時などに言う語〕(明解) 明解には「など」が3回もある 私だったらこの文章は直すが、変に厳密性を求めている エディション、版がいろいろあるが 古いのは新語が載っていないだけなので古本屋で古いのを探すといい 差別語が載っていないと古い文学の意味がわからないことがある むしろ昔の版を買うべき